伝染病に美しいも醜いもないが、女性の立場であれば最も美しいのは「肺病」であろう。
その弱々しさ、透き通るような青白い肌。ああ薄幸の美人女性の運命やいかに、といったイメージが人気の秘密なのだろう
最低なのは「赤痢」である。
なんといっても「便所に入り浸り」なので人気はない。

だが最低最悪なのはまちがいなく「梅毒」であろう。
これは、ひどい。
コロンブスの一行がヨーロッパに持ち帰ってから一気に世界中に広がった性病だが、全身の臓器がおかされた後に脳までがイカレるそうだ。
その病原体こそが上の写真の「梅毒スピロヘータ」である。
見よ、このおぞましさ！
どちらが前だか後ろだかわからん。

私と同世代の女性は、夏休みの前になると教室で梅毒の映画を観せられた。
気分が悪くなって保健室に駆け込む女生徒が続出した。
そして最後に先生が一言。

「男を見たら梅毒だと思え。」

だがその先生も知らないにちがいない。
ビリヤードの世界には梅毒に勝るとも劣らぬおそろしい病があることを。

多くのビリヤードプレイヤーを恐怖のズンドコに叩き込んだその病は「谷山病」とよばれる。
感染源はペチャンコブラザーズ会長谷山浩之（たにやん）。
そしてその病原体こそが上図の「谷山スピロヘータ」である。

この病を食らうことはマトモな球との訣別を意味する。
「谷山スピロヘータ」に感染したが最後、まわってくるのは７割がクッション、よくて長いコーナーバンクくらいのものだ。
それは「球撞き」というよりも「球当て」と呼ぶべきであろう。
４〜５人で５・９を始める時ジャンケンをするが、その時「ギャ〜！」という叫び声が必ず聞こえてくる。それはジャンケンに負けて谷やんの次の順番になった者の断末魔の叫びである。

梅毒は野口英世博士らの研究によりその撃退方法が開発されたが、「谷山病」は目下野放し状態である。従って有効な対策は、ない。
病院で検査を受けてもし「谷山スピロヘータ」が検出されたとしたら、気の毒であるがその選手の将来は絶望的である。