2008/3/1(土)。
「新宿サムタイム」は熱狂の渦に包まれていた。第2回「フジヤマ」トーナメントがそれである。
「フジヤマ」のルールはこちら
第1回大会ではアントニオ・リニングのスリークッションバンク2連発を食らってあえなく沈没したBOSSだったが、雪辱に燃える今回はなんと試合の2日前から調整に入っていた。
ふっふっふっふっふ
頭を洗って待ってろリニング!
いや・・・違う・・・
首を洗って待ってろリニング!
「フジヤマ」というゲームは、序盤はワンポケットとピン倒し、中盤以降は8ボールの知識が必要である。
「入れ」も大事だが「戦略」はそれにもまして重要なのだ。
これを5ゲームくらいやると身体よりも頭が疲れる。そしてそれは囲碁や将棋の後と似たような疲れなのだ。脳の同じ部分を使っているのかもしれない。
「オレの為に作ったようなゲームだな。」
囲碁6段、将棋8級のBOSSは燃えた。
BOSSの猛チャージが開始された。
かれは塙プロ(JPBA)を一蹴すると、予選リーグ突破まであと1勝という場面で脇本プロ(JPBA)と戦っていた。
持ち前の「ヘドロビリヤード 」の威力を存分に発揮したBOSSは難球をズドンと入れ残り2球になったところでニタリと笑った。
ふっふっふっふ
もらったぜ♪
が、
「ファール。穴が違います。」
・・・・・
痛恨の「穴まちがい 」。む、無念!
「穴を間違えちゃいや〜ん♪」
女性ファンの絶叫とともにBOSSは沈没したのである。
ここに秘かな野望に燃える男がいた。
森学プロ(JPBA)
人呼んで「おたけびの森」
上の写真左の男である。まちがっても右ではない。右はBOSSだ。
学ちゃんはこの試合でMVPを狙っていた。
最もエキサイティングな選手に対しファン投票で選ばれるMVP。
これだっ!!
学ちゃんはMVPを狙ってはるばる仙台から駆けつけたのである。
まさに「みちのく一人旅」。
学ちゃんはナイスショットが出るとこぶしを突き上げて叫ぶ。
「どっしゃー!!」
その叫びは静寂なビリヤード会場を一瞬にしてプロレス会場に変えてしまうほどのものだ。
「どっしゃー」というのは「どすこい」と「よっしゃー」をひとつにしたのだろう。
「学ちゃんの悲劇」
以前、学ちゃんは公式戦でスーパーショットを炸裂させた。
「どっしゃー!!」
喜んだ彼は大音声とともに後ろにぴょこんとジャンプした。
悲劇が起きた。
後ろで構えに入っていた別の選手をなぎ倒したのである。
イエローカードを食らった学ちゃんのパフォーマンスは、それ以来ちょっとスケールが小さくなった。反省したのだ。
BOSSはそそのかした。
「ファンは君の球を見に来ているのではない。パフォーマンスを見に来ているのだ。イエローカードごときにビビってどうする。男だったらレッドカードをめざせ。」
「んだ。」
学ちゃんはふかく頷いた。
MYPをめざす学ちゃんは秘策を準備していた。
これである。
「鎧のレンタル1日18000円」
これを着て試合会場に登場すればMYPは確実だ。インターネットで鎧を見つけた彼は小躍りした。
だがここで問題が発生した。鎧を着るには6帖間が必要だというのだ。
うーむ・・・サムタイム近くの6帖間・・・
唐突に妙案がひらめいた。
「そうだっ! アルタの更衣室を借りよう!」
「笑っていいとも」ファンの彼は「新宿アルタ」を知っていたのだ。
さっそく学ちゃんは「アルタ」に電話をいれた。
だが、相手にしてもらえなかった。
こうして「MVP強奪作戦」は水泡に帰したのである。
もはや本業の球でMVPをいただく以外にない。
崖っぷちの学ちゃんは燃えた。
ここに「パフォーマンス2巨頭」の一方の雄がいる。
松野剛明プロ(JPBA)である。
松野・森両プロを人は呼んだ。
「いずれがアヤメかカキツバタ」
いや違う。絶対に違うぞ、これは。
「踊る松野に叫ぶ森」
まさに「パフォーマンスの竜虎」。
関羽と張飛。
いずれが大鵬か柏戸か。(古くてすまん)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇
なんという幸運であろう。
「松野 VS 森」が実現したのである。まさに天佑。
観客は総立ちで狂喜し、はからずもこの時ヤンキーススタジアムを思わせるほどのウエーブが湧き起こった。
対戦者ふたりは自らを「えんたーていなー」と称している。
はやい話が「変態対決」である。
「日本一の変態プレイヤー」の座に輝くのはどちらか。
松野は踊り森は叫んだ。
試合は序盤の圧倒的劣勢を驚異のクソ粘りでひっくり返した学ちゃんの勝利。
試合後、松野プロにインタビューした。
「あなたと学ちゃんとではどちらが変態ですか?」
松野プロはぶ然として答えた。
「いっしょにしないでください。」
目標のMVPをまんまと手中におさめた学ちゃんは、えぐり出すように腹の底から叫んだ。
「どっしゃー!!」
ターザンも振り向くほどのその叫びは、新宿上空を覆うモヤを吹き飛ばしたのである。
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