ビリヤードと髪の毛の関係について考えた。
前髪が長ければジャマになる。入念にセットしていては試合に遅れてしまう。油を塗りたくった髪を触ったらキュ−がすべってどうにもならない。
そもそも髪の毛ほどビリヤードにとって間尺に合わないものはあるまい。
その点、大輔は恵まれている。髪が少ないのだ。しかも年々減り続けている。
ここに彼の苦悩がある。
ビリヤードを「ナンパの道具」と位置付ける田中派幹事長の要職にあって坊主頭は許されないのである。セットするほどの本数もないが、さりとて坊主頭にもできない。
このふんぎりの悪さが大輔の球の障害になっている。
いずれずっぽりハゲた時、彼のビリヤードは花開くのかもしれない。
彼はエリート薬剤師である。
わたしが疲れ目を訴えると次の日にはすぐに目薬を持参するなど細かい気配りのできる男でもある。
だがその気配りもビリヤードには反映されていない。
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