知る人ぞ知るアーティストである。
かれはその名声と正体不明の外車を武器に六本木あたりのキャバクラを荒らしまわり、そうして年がら年中泌尿器科に通っている。
そもそもわたしを含めモノを書く人間にロクな者はいないのであるから、そのわたしを信じてウラ話を暴露したこと自体
あまい
と言わざるを得ない。
かれは意外に勝負師である。
守るべきか攻めるべきか、の選択を迫られたとき、かれは必ず攻める。
だが実力を伴わない攻めは「無謀」と呼ぶべきで、たいてい失敗し、そして負けている。
この「アマさ」と「無謀」がかれの球の大障害になっているのだが、よほどシアワセなのかかれ自身はそのことに気付いていない。
愛称「アントニー」はわたしの命名によるものだが、なぜこの名がつけられたのか、忘れた。
だが「アントニー」と呼べば返事をするので、本人はけっこう気に入っているように思われる。