ペアマッチ。
これこそがBOSSの秘策だったのである。
トッププロといえども、8時間撞きつづけた後であれば計算上「ボーラード50点」くらいまで落ちぶれているはずだ。
しかも、
「 いやいや今日はお疲れさまでした〜♪いや〜ビリヤードお上手ですねぇ〜♪どうもどうも〜♪」
言葉巧みに近付きビールを飲ませることに成功した。
そしてペアマッチを持ち掛けたのである。
ああ、なんという巧妙な作戦。
思えば「色仕掛け」も「物量作戦」もすべてペアマッチのための布石だったのだ。
しかも「やっと終わった。」とホッとさせておいて次の攻撃を繰り出す。
もはやこれは「ノルマンディー上陸作戦」に勝るとも劣らぬ高等戦術といえよう。
BOSSは自らの才能に酔いしれた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
みなさんは思っておられるだろう。
「BOSSってのは、汚い野郎だな。」
でもねえ・・・
まともにやって、あなたは利川・高橋コンビに勝てますか?
このふたり、けっこう入れるよ?
っていうか、このふたりがビリヤード店に来るというのは
マイク・タイソンと朝青龍が殴り込んできたようなもんなんだよっ!
こうして地獄のペアマッチが始まったのである。
高橋プロの提案でチーム名も決まった。
利川・高橋(まあまあ入れるチーム)
VS
BOSS・藤原(武蔵小山撞球隊チーム)
『まあまあ入れるチーム』はすでにBOSSの罠にハマっている。
武蔵小山撞球隊が天下に名乗りをあげる時がついにきたのだ!!
ふっふっふっふっふ
だが・・・
彼らはタフだった。
しかも・・・
BOSSはこの時やっと、今日一度もキューを握っていないことに気付いたのである。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
負けた。
武蔵小山撞球隊は瓦礫の山と化した。
が、
瓦礫のなかでただ一輪、
唯一の勝利者「中村」という種類のペンペン草がけなげに空を仰いでいたのである。
ペンペン草
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