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ハスラー列伝 (花谷勝編1)

 

 

「わたしには自慢できることがふたつだけあります。だれにも負けないくらい練習したことと、もうひとつはだれよりもたくさん負けたことです。」
そう言うと花谷さんはカラカラ笑ってみせた。


花谷勝 全日本選手権戦績』
1971年(第4回)  14ー1の部3位
1972年(第5回)  ローテーションの部3位
1973年(第6回)  14ー1の部優勝
1974年(第7回)  ナインボールの部準優勝
1976年(第9回)  14ー1の部準優勝
1978年(第11回) ナインボールの部3位
1982年(第15回) 14ー1の部準優勝、ナインボールの部3位
1983年(第16回) ナインボールの部優勝、14ー1の部3位
1990年(第23回) 14ー1の部優勝、総合優勝


プロ1期生として日本ビリヤード界の創成期を支えた名手であるが、成績だけで言うならもっと数字を稼いだ選手はいるだろう。
だが、彼の真骨頂は成績だけで計ることはできない。
ビデオのない時代に単身アメリカに渡り、ジミー・ムーアやレイ・マーチン、更にはスティーブ・ミゼラクの球を日本に紹介しただけではなく、彼らの球を研究するかたわらで長谷川邦夫をはじめとする多くの選手を育て、蔵之前忠勝らに強い影響を与えた。
それはまさに偉業と呼んでいいだろう。
花谷勝という男が日本ビリヤードの基礎を構築するにあたり何を考えどのような努力をしたのか、わたしはそれを書きたいと思う。

 

太平洋戦争が終わり、疎開先から大阪市此花区に帰ってきた花谷さんは、3年ほど会社勤めをした後に実家のビリヤード「千鶴」を手伝うことになった。
四つ玉とポケットの店だが、ポケット台は四つ玉の台を改造したもので、それでもポケットの大きさは1.5〜1.8くらいだったのでけっこうきびしい台だったようだ。
花谷さんはORCに参加し、実家の店で黙々と撞いた。25、6才でORCのB級だったというから相当以上の腕前だったにちがいない。当時は25才といえば若手も若手、最年少グループだった。
関西にはKRC(京都)とORC(大阪)があり毎月10人選抜の総当たり対抗戦が開催されたが、ORCの選手は5勝すれば翌月はシードされたのに対しKRCは6勝でシードだったところをみると、京都の方が強かったようだ。


 


1965年。花谷さんが27才のとき、ビリヤード界に大変革が起きる。
京都の藤間一男が提唱してプロ組織を作る話が持ち上がったのだ。
弟1期はプロテストはなく、応募と書類審査によってプロが誕生した。 
森口信幸(会長)、堀江聰太郎、田中守、野山良一、野山修二、藤間一男、桜本守、太田紘治、鍵村哲男、花谷勝、大橋公平。
内訳はKRCから7名、ORCから4名。たったの11名ではあるが錚々たるメンバーである。
「プロというのがどんなものやらさっぱり要領を得ないまま応募したらなぜか合格しました。それでプロ1期というわけです。ただその当時、ORCだけでも私より強い選手は何人もいました。」
後になって聞いたところによると、この花谷というのは大して強くもないが何はともあれ練習量が半端ではない。今は弱くてもあれだけ練習すればそのうちに強くなるだろう、という期待票を集めたのだそうだ。
練習量でプロに合格したのは花谷さんくらいのものだろう。
ただ、弱かった。
この年のランキングは、ビリ。
2年目には井上彰と菅伸夫の2名がプロ入りし、当初の11名と合わせて計13名になった。
そして2年目のランキングも、ビリ。
「もうね。弱いのは自分でわかってましたけど、2年連続でビリになった時はさすがに生きていくのがイヤになるくらいがっかりしました。」

 

だが花谷さんはくじけなかった。
それどころか、今のままの環境で練習を続けても駄目なのではないか、と考えた挙句に秘策を編み出した。
出稽古である。
これはと思う選手のところに通って、技術を盗もうと考えたのだ。
この出稽古の犠牲になったのが藤間一男である。
「藤間さんは別格でした。ものすごいスピードでパチンパチン撞いてサササーと勝ってしまう。それで一丁上がり、ってなもんです。私なんぞは比較にもなりゃしないし、同じプロ仲間などと思ったこともありません。雲の上の人でした。」
花谷さんの店は月に2回休みがあるので、休みの日に藤間さんのところに通うことにしたのだ。
14−1で対戦するのだが、ハンデは150対100。それでまったく歯がたたなかった。

 

 

(つづく)

 


 
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