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「華」ということ

 


王貞治『一本足打法』

 

福岡ソフトバンクホークスの王監督が引退されました。

「大好きな野球を50年も続けさせていただいて、わたしは本当に幸福でした。」

この挨拶を聞いたとき、わたしはもう少しで泣くところでした。いや、もしかしたら1滴か2滴くらいは不覚に及んだかも知れません。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

わたしの子供時代、男の子の遊びの一番人気はなんといっても野球でした。
王、金田、広岡の3選手で「おう、カネだ。拾うか。」というダジャレが流行ったくらいです。

 

わたしは広島県人ですので地元球団といえば「広島カープ」ですが、昭和40年代のカープは近年まれに見る弱小チームで、内容にしても投手を代打に使ったこともあれば、捕手がいなくなって衣笠がマスクをかぶったことさえあったのです。
現在のPL学園といい勝負だったかも知れません。
その原因は単純明快で、カネがなかったからです。なんとプロ球団「広島カープ」は、市民の寄付金でやりくりしていたのです。
当然のことながらいい選手が入団するはずもなく万年最下位を独走していたのですが、一方ファンは熱狂的で、巨人戦に2連勝するだけで商店街はバーゲンセールでした。

 

昭和50年ころには広島市民球場にちょくちょく野球観戦に行ったものですが、 カープファンの応援などというのはまったくもって話にならないもので、相手選手に対し人間の尊厳を踏みにじるほどの容赦のないヤジを浴びせておりました。
知人の元プロ野球選手によりますと、
「われわれは全国の球場を渡り歩いてヤジは右の耳から入っても左の耳から抜けていく。でも、市民球場のヤジは右から左に抜ける途中で引っ掛かって止まることがあった。」
小学校のガキが「おどりゃー堀内。ぶち殺すどー。」くらいは普通だったのですからひどいものです。

 

ところが、王さんが打席に入るとヤジはピタリと止みました。

「王がホームランを打ってカープが勝つ。」

これこそがカープファンにとって最高の試合だったわけです。
ビリヤードに例えるとすれば「エフレンの超絶技巧ビリヤードを堪能して、ゲームは日本選手が勝つ」といったところでしょうか。
まさに「別格」でした。

 


村田兆治『マサカリ投法』

 

「試合はカープに勝ってほしい。でも王のホームランも見たい」というのは矛盾もはなはだしいのですが、現実に市民球場の3万人を沈黙させたのは何であったかを考えると、これは王さんの持つ「華」であったとしか説明のしようがない。
3万人のカープファンは、それこそ敵味方も忘れて「王貞治」という華に見とれていたということです。

 

今回はこの「華」について少し書いてみようと思います。

 

プロ野球の世界には王さんの他にも「華」のある選手は大勢おられますが、思いつくままに挙げてみるとまずは上の写真の村田兆治。
かつてのロッテの大エースでその変則的な投球フォームは「マサカリ投法」と呼ばれていました。
かれはパリーグでしたので市民球場で投げることはありませんでしたが、かれだったら王さんと同じように市民球場を沈黙させたかも知れません。
なんといっても広島県人ですし。

 

 


野茂英雄『トルネード投法』


次は野茂英雄です。
近鉄からアメリカ大リーグ「ドジャース」に入団し、大リーグでノーヒットノーラン2回の大投手ですが、これも「トルネード(竜巻き)」と呼ばれる変則投法でした。
わたしの大阪時代、友人が野球観戦に行くというのでどこに行くんだと聞くと、「近鉄の応援に行く。」ではなく「ちょっと野茂を見に行ってくる。」でした。

 

どうやら「華」の条件には「変則」ということがあるのかも知れません。



種田仁『ガニマタ打法』

 

 

上の写真の種田(横浜)も相当な変則フォームです。
人気のある選手ですが、インターネットで検索しても「王貞治」の400万件に対し「種田仁」は13万件。
これは「成績」の差でしょう。

 

現在のプロ野球で最も「華」のある選手といえばこの人です。



 

 

清原和博。
巨人時代に東京ドームで清原が打席に入ると隣の人の声が聞こえないほどの大声援でした。
ただ、かれは変則フォームではありません。
かれの魅力は「勝負強さ」であります。
ここ一番の大事な場面で何かやってくれそうな、そういう期待を抱かせるモノを持っていました。

 

 



高見盛


水戸泉

 

大相撲の人気力士をふたりだけ紹介しておきます。
左の高見盛は仕切り前に「えいっ、えいっ!」とものすごい気合を入れます。右の水戸泉の塩撒きは豪快で、相手力士の頭が塩もぶれになったこともあったそうです。
気合いを前面に出す力士は人気があります。
それはつまり「パフォーマンス」ということです。

 

それではこのあたりで、批判覚悟で「華のない選手」をご紹介いたします。

 

 



デニス・オルコロ

 

おそらく現在、フィリピンで最も撞けている選手でしょう。
ええ、そりゃもう強いですよ。今年のジャパンオープン決勝でもオープニングからいきなりの7連続マスワリなんぞやってました。
でも、何なんでしょうね。「華がない」と申しますか「影が薄い」と申しますか・・・一言で言いますと

 

地味

 

実際わたしなど、かれのビデオを観ると5分以内で寝ます。ジャパンオープンの7連続マスワリも目の前で観ましたけど、3発目ころにはうつらうつらしておりました。
「NHK教育」を観せられている気分になるのです。

 

あっ、そうそう。
「華」といえばこの人を忘れておりました。

 


 

左の横山やすし。通称「やっさん」であります。

 

大阪難波は路地を歩いているとそこら辺の一膳飯屋から突然「アホの坂田」が出てくるような街ですが、やっさんの場合は住之江競艇では絶大な人気を誇っておりました。
特観席にやっさんがいると、多くのファンが「やっさーん。」と呼ぶ。やっさんは満面の笑みで手を振ってそれに応える。
「何をやらかすかわからない」
つまり

 

意外性

 

このあたりがかれの魅力でしょう。
ちょっと目を離している隙に何をやりだすかわからないのでヨソ見をしている間もない。

 

やっさんを乗せたことのある京都のタクシー運転手によりますと、

 

 

「あのガキャ、歩道を走らせやがった。」

 

 

ここまで書いてきて「華のある選手」「人気のある選手」の条件は次のようになるでしょうか。

○変則フォーム
○成績
○勝負強さ
○パフォーマンス
○意外性

 

ただ、ひとつだけ重大なことがあります。
それは「ビリヤードは上手い選手ほど簡単そうに見える」ということであります。
下手な選手は例えば「フリ」をまちがえたりしますので手球が派手に動き回る。シロウト目にはヘタの方が上手に見え、上手な球は眠くなる。
しかしながらこれこそはビリヤードの宿命であります。この部分をガタガタ言っても仕方ない。
万事承知の上で大輪の「華」を咲かせてほしいものです。

 

最後に「王貞治語録」をご紹介しておきます。

●756号を打たれた鈴木康二朗(ヤクルト)は報道陣から取材攻めに遭っていた。これを慮った王は鈴木に声を掛け「俺のせいでえらいことになってしまったな。色々言われるだろうが、絶対に負けるなよ」と励ました。鈴木は「自分がこのまま潰れたら、王さんの記録にも泥を塗る事になってしまう」と奮起、翌1978年には13勝を挙げてヤクルト球団史上初のリーグ優勝と日本一に導き、近鉄バファローズ移籍後には救援投手として活躍。また、鈴木はプロ野球機構から新記録を打たれた記念としてサイパン旅行を打診されたが、プロの意地としてこれを断っている。

王が最も三振を奪われた投手は最大のライバル江夏からであるが、その江夏が最も本塁打を打たれた打者は王である。そして約250回の対戦で死球は只の1回だけであり、関係者から指摘されるまでお互いに死球はゼロだと思っていた。

●本塁打を打っても大はしゃぎするようなことがなかったのは兄の鉄城の影響である。高校時代、本塁打を打ってホームベース上で喜ぶ王を見た鉄城は「打たれた相手のことを考えろ」と王を叱りつけた。以来、王は本塁打を打っても喜ぶそぶりをしなくなった。

WBCの際、イチローが王に対し「監督は現役時代に、バッティングが簡単だ、と思ったことはありますか?」と質問し、王は「バッティングの極意を掴んだ、と思ったら逃げていく、その繰り返しで結局、そんなことは一度もなかった」と答えた。イチローはこれを聞き「王監督だってそうだったんだ」と感じ、バッティングで悩むのは当然だ、と再認識でき、安心したという。

 

 
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