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箱根十番碁 (BOSS自戦解説)

 


 

いよいよ始まった。
武蔵小山撞球隊囲碁部の覇権争いである。

 

さて、おっさんが「お前の碁はヘドロのような碁だ。」と言い、BOSSが「うるせー。お前の碁は女にモテない碁だ。」とののしり合ったのは、ふたりの棋風の違いだ。
おっさんは自らの碁を評して「本格派」などと言っているが、BOSSに言わせるとただの「地味な碁」だ。なんといっても位が低い。

 

地下鉄日比谷線のような碁だ。

 

なぜ日比谷線なのか、ということであるが、これが例えば「銀座線」では「銀座」の華やかなイメージがおっさんの碁には似合わないし、かといってあさっての方角ばかり走る「大江戸線」や鉄クズ臭い「京急線」では気の毒なので中間をとって日比谷線なのだ。

 

対するBOSSの碁はこれはもう「豪華絢爛」。例えて言うなら「源氏絵巻」であろう。
「無責任な碁」という意見がごく一部にあるにはあるが、まずは天空を自在に飛翔する龍を彷佛とさせる。

 

 

この勝負を一口で表現すれば、戦闘機と戦車の戦いである。
「ロックオン完了。発射。」
BOSSの戦闘機から発射されたミサイルが、おっさんの戦車に命中する。
狭くて暑い戦車のなかでインキンに苦しむおっさんが、そのインキンを掻きむしりながらスタコラ逃げていく。
そのあたりがこの碁の見どころである。

 

黒:おっさん 白:BOSS 黒6目半コミ出し

(1〜21)

 

黒番おっさんの初手は右上三々。
いきなり出た。「地下鉄日比谷線」である。
この「三々」は江戸時代には「破門の手」と言われた。ひたすら手堅いばかりで中央に向かって発展性に乏しく、こんな手を打つようでは見込みがないので碁打ちはあきらめ田舎に帰って田植えの手伝いでもしなさい。
そういう手である。
おっさんの碁は先行逃げきり型、BOSSは追い込み型である。
しかしながら先行してそのまま逃げ切れると考えること自体が皮算用で、例えば就職後毎月5万円をコツコツと貯金して30年。そうして手にした2000万で何をしようか、と思案しているところで車にはねられてサヨナラ。
おっさんの碁はそういう碁である。

 

磐面に戻ろう。
右下はこの部分だけで一冊の本が書けるくらい変化が多いので、ここでは触れない。
白12、白20はあえて定石よりも一路控えるBOSS流。
問題は黒21カカリである。
この局面では左辺より下辺のほうが価値が高い。左辺が坪10万とすれば下辺は坪15万は下らないだろう。
左下にカカるのであれば下辺からでなければなるまい。

 

それにしてもおっさんの碁は低い。
ここで地震がきたら、おっさんの石はバラバラと碁盤から転がり落ちるだろう。


(21〜34)

 

囲碁は別名「手談」(しゅだん)と呼ばれる。
「手で話をする」という意味だが、黒21以下を文字にすると
黒「左辺をいただくよ。」
白「んだんだ。」
こんな感じだろう。
さて磐面は進んで黒33と下辺を飛んだところで白は34と左辺にぼんやり桂馬した。
これがBOSS流である。

 

江戸時代末期、囲碁界の王たらんとする本因坊家と井上家は激闘を繰り広げていた。
本因坊家の代表は「300年来の天才」といわれる秀策。これに対し必勝を期す井上家は刺客として井上玄庵因碩(いんせき)を送り込んだ。
白番因碩優勢のまま中盤戦に入り、ここで秀策は黒127手目に天来の妙手を放つ。
この手を見た因碩は激しく動揺し、耳たぶが真っ赤に染まったといわれる。
人呼んで「耳赤の一手」。
この手を境に形勢は一気に逆転、黒番秀策の勝利に終わったのである。
さて白34の桂馬を見たおっさんは花粉症なのか風邪気味なのか、はたまた酒が過ぎたのか鼻が赤くなった。
この手を「鼻赤の一手」と呼んでいいだろう。

 

(34〜76)

 

少しだけ解説をしておこう。
この局面での眼目は白36の「詰め」である。単に36でもいいのだが、将来黒石が増えてから34と打っても受けてくれるとは限らない。ベトナムの人民解放戦線に対するアメリカ軍のような大包囲作戦を展開される可能性もある。
また白34で1路左の「肩つき」では、数手進んだ後に先手を得た黒は逆にK17に詰めてくるだろう。これが痛い。
かといって34を無視してK17に詰めると、左辺は存分に蹂躙される。
結局のところ黒は受けることになるが、どう受けてもキカシと白は見ている。
以上「鼻赤の一手」の根拠を述べてみた。

 

黒37がおっさんの勝負手である。
この手は恐ろしい狙いを秘めているので白もうかつには打てない。
対する白38が反骨の手。
「思い通りにはいかんぞ。」と言っているわけで、このあたりおっさんとBOSSは大いに語り合っている。前述の「手談」である。

 

黒55が大失着である。1手パスに近い放心の一手。
もともと右辺は白の勢力圏、そこに侵入してきた黒は「泥棒」の立場である。泥棒は仕事が終わったら一目散にズラかるしかあるまい。この黒55はズラかる前に家の戸締まりをしたような手だ。几帳面なことで・・・

 

そして白76が決め手である。

 

 

(76〜96)

 

白76ではいろいろ考えた。

 

(参考図)

 

第一感は参考図76のノゾキである。
これに対し77とツゲば本譜の通り進んでぴったりシチョウなので、黒は変化球を投げてくるだろう。
まあ、どういう展開になっても白不利は考えられないが、ウムを言わせず一気に決めにいったのが本譜白76である。
白7子を捨て石にして白96まで下辺を大きく破った。
「華麗」と呼ぶしかない。

 

 

(96〜112)

 

白106のツケノビから上辺を盛り上げる。
このあたり、磐面でも白よしの形勢である。

 

 



(112〜133)

上辺でコウが発生したが、白としては中央を連打しているので仕方ない。

 

(133〜235)


結局、黒はコウで右辺数子を取ったがこの程度では間に合わず、この時点で白の勝ちは動かない。
あざやかな収束である。

 

総譜(235手完)白4目半勝ち

 

「モテる碁」について説明が必要だろう。
これはつまり「飛行機」と「地下鉄」のどちらがモテるか、ということである。
BOSSの碁を「飛行機」とすれば、おっさんの碁は「地下鉄」。

 

おっさんが女性に声をかける。

「ねえねえ。ボクといっしょに地下鉄でモグラを探しに行かない?」

BOSSも女性に声をかける。

「オレといっしょに飛行機で星を見にいこうぜ。セニョリータ♪」

 

おっさんがモグラ好きの女性を1人GETするころには、BOSSの飛行機には女性が10ダースくらいは乗り込んでいるだろう。

 

 

関西囲碁界のドン橋本宇太郎氏は名言を残された。

「碁は100年を繋ぐ」

師匠が弟子に碁を教える。弟子は、そのまた弟子に碁を教える。こうして伝承を続けることで囲碁を通じて100年後の人たちとも語り合えるということだ。
事実、若いころ「火の玉宇太郎」と呼ばれた氏の反骨精神は、現在も関西囲碁界に脈々と息づいている。

 

ビリヤードは100年を繋ぐ

そうありたいものだ。

 

 

参考文献「じゃこ日記」

 

 



 

 

 

 
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