最近ではビリヤードの世界も国際化が進み、都内の試合で外国選手を見かけることも多く、また逆に日本選手が海外遠征することも多い。
で、いつも気になるのは「言葉」の問題であります。
イチロー選手や松井選手などがアメリカ大リーグで活躍しておられますが、かれらも英語には苦労したに違いない。
特に野球の場合はチームプレーですので、言葉が通じないことにはなにかと困った問題が発生するでしょう。
ただかれらはアメリカ在住であります。
最初のうちは右往左往するでしょうが、まわりが全部英語なわけですからそのうちに覚えるということもありそうだ。
ところがビリヤード選手の場合はほとんどが国内在住で日本語で生活しているのですから自然に英語を覚える、というわけにはいきません。
日本選手団は海外遠征先で、ジョン万次郎のようにキョロキョロしているのではあるまいか。
ストリックランドにイチャモンつけられて困っているのではないか。
わたしはとても心配しているのです。
日本人初のアメリカ渡航者ジョン万次郎
たとえば「プッシュコール」というのがあります。
どうってことはない。撞く前に
「Push」
これだけのことです。
ええ、ええ、それくらいはわたしも存じ上げておりますがね、問題は発音です。
誤って
「プッシー」
などとコールしたら、場内は大混乱に陥ることでしょう。
こういうのはいくらでもある話です。
●レストランで「水をください」と注文した。「ウオーター」です。ところが何度も「ウオーター」「ウオーター」と言っているのに従業員はキョトンとしている。
怒ったその人は叫びました。
「わりゃ〜!!」
水がきたそうです。
●タクシーに乗って「ヒルトンに行ってくれ。」
ヒルトンホテルです。
ところがそのタクシー、山の中を走りまわったあげく着いたのは山頂の貯水タンクでした。
「Hill Tank」(丘のタンク)
知人のフランス人に教わった話ですが、「スティーブンソン」というタバコを買うときは「七兵衛さん」。
「わたしにはわかりません。」はフランス語で「牛乳コッペパン。」と発音するのがいいようです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
最近は日常生活でも英語を使うことが多く、これは好材料でしょう。
普段から英語に接するというのはいいことです。
つい先日のことです。
「例の書類はいつできる?」
「はい。明日の夕方にはトスできます。」
トス?
トスってなんじゃ?
「明日の夕方にはお渡しできます。」ではマズイのか?
第一、「サインはV」世代のわたしは
トスされたらスパイクを打ちたくなるんだよ!!
おかげさまでわたしも「コンセプト」と「コンセント」の違いくらいは理解できるようになりましたので、環境というのは大したものであります。
大平洋戦争末期、台湾沖で1隻の輸送船がアメリカ潜水艦の魚雷をくらって沈没した。
運悪くその輸送船に乗っていて命からがら内地に辿りついた男。
その男こそが、中学時代のわたしの英語教師であります。
かれがなぜ英語教師になったのかまったくもって不明ですが、まちがいないのはかれがアメリカを嫌いだったということです。
まあ、気持ちはわかります。
だれだって自分の乗っている船に魚雷をくらわせた国を好きにはなれないでしょう。
「アメリカ人は低能である。」
かれはそう言いながら英語を教えていたのです。
ムチャクチャであります。
そもそも広島県の寒村で育ったわたしは、子供のころ外国人を見たこともありませんでした。小学校の修学旅行先で初めて黒人を見た時、わたしたちは心底ビビってしまい、そして身構えたのです。
幕末の黒船騒動のころの日本人と大差ありませんでした。
これが「環境」ということです。
英語を学ぶにはまさしく「最悪の環境」。
この状況下で英語好きな子供が育つことはありません。
さて日本ビリヤードが世界を席巻するためにはどのような環境が必要であるか。
問題はここです。
たとえば休日の昼下がり、あなたはビリヤード場で家族連れを見たことがありますか?
わたしは32年間球屋をウロウロしておりますが、正直なところ「家族連れ」などはほとんど見たことがありません。
これではダメです。
世の中でビリヤードはどれくらい認知されているのか。それを計るバロメーターこそが「ビリヤード場に家族連れがどれだけいるのか」ということなのであります。
「子供のお客さんが多いので禁煙してくれ。」と言われれば、わたしはよろこんで禁煙いたします。
いままでは簡単な球をドジった時
「くっそ〜!!」
と叫んでいましたが、これからは
「Sorry」
とつぶやいて、両手をひろげてみせます。
「ビリヤードをメジャースポーツに昇格させるためには何を為すべきか。」
こういう話題で飲む酒は、けっしてマズいものではありません。
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